昭和45年卒・白谷達也さんの著作「唐川びとへ」が電子版になりました

稲門写真クラブ代表幹事である白谷達也さん(昭45卒)が自身の著作「唐川びとへ」を電子版として出版されました。

唐川での十数年におよぶ取材とひとびととの交流が描かれた写真をぜひお楽しみください。

書籍より値段もてごろでiBooksやKindleにダウンロードしてみられるそうです。

Kindle版はこちらです。

http://www.amazon.co.jp/%E5%94%90%E5%B7%9D%E3%81%B3%E3%81%A8%E3%81%B8-%E3%80%9C%E7%B2%BE%E9%9C%8A%E3%81%9F%E3%81%A1%E3%81%AE%E5%BA%AD-%E5%87%BA%E9%9B%B2%E3%83%BB%E5%94%90%E5%B7%9D-%E5%8F%A4%E6%BE%A4%E9%99%BD%E5%AD%90-ebook/dp/B00L4EHO32/ref=sr_1_1?s=digital-text&ie=UTF8&qid=1403757151&sr=1-1&keywords=%E5%94%90%E5%B7%9D%E3%81%B3%E3%81%A8%E3%81%B8

iBooks版はこちらです。

https://itunes.apple.com/jp/book/tang-chuanbitohe/id890677486?mt=11

 

 

唐川びとへ
精霊たちの庭 出雲・唐川
 
 唐 川集落は小さな山あいの村。日本列島本州の西部、島根県出雲地方にあり、日本海をヘだてて朝鮮半島と向かい合う位置にある。50数戸、人口200人足らず で、いちばんの産業はお茶の栽培だ。古くから自前の製茶工場を経営して、上質な日本茶をつくっている。唐川を訪れる人は、茶畑に日の光がキラキラするその 風景にまず魅了され、そして、ふるまわれるお茶のゆたかな味わいにしみじみと感じ入るだろう。
 
 唐川の人びとは、7世紀に書かれた『出雲国風土記』にある韓竃神社の氏子たちだ。韓竃神社は山の中腹にある巨大な岩屋で、そこにお参りするためにはたくさんの険しい石段を登り、巨大な巌の間をすり抜けなければならない。この神社では25年に一度、遷宮が行われてきた。
 韓竃神社の秋の大祭には、獅子舞や神楽が奉 納される。近年、若者が外に出て減少してはいるが、こうした祭のときには3世代が集っておめでたい場をつくり上げる。彼らの血に流れるもののせいか、この ときになるとご飯を食べることも忘れて舞や囃子に熱中する。舞や笛・太鼓のお囃子は、現在も古いままに継承され、子や孫に教え継がれている。何度か消滅の 危機に面しながら、それにまさる熱意で盛り返してきた。
 山に入りミツマタを刈る老人、そのミツマタ から紙を漉く夫婦、小学生から老人まで総出で競う運動会、うぐいすを友とする陽気な男、数キロ離れた小学校へ徒歩通学するほんの少しの小学生たち−−。5 月の新茶まつり、6月の荒神祭、夏の観音堂の念仏講、そして11月の大祭など、季節季節のさまざまなお祭りとともに、彼らはいつも自然体で生きている。
 
 私たちは1990年代の始めに、ラフカディ オ・ハーン=小泉八雲の足跡を訪ねて出雲地方を取材した。ハーンが長い旅路の最後にやって来たのが日本の、出雲地方だった。ハーンの愛した出雲の人びとが 醸す風景は、そのまま唐川びとの風景につながるように思える。私たちがその取材の過程で唐川びとと出会ったのは、たんに偶然ばかりではないだろう。
 1990年代の終り、私たちは韓竃神社の遷 宮が行われた頃に初めて唐川集落に入り、以後十数年の取材をもとにこの本をまとめた。唐川という小さな山あいの集落と、その土地に根づいた唐川びとの哀歓 を、ここに掲載した160点余の写真などから、感じ取っていただければうれしい。
2014年
  白谷達也(写真)
古澤陽子(記事)