オンライン合評会を終えて 平成3年卒・増田 智

コロナ禍で写真展もできない中、新しい試みとしてオンライン夏季展を先日開催した早大写真部幹事長のKさんの提案でOBと現役でオンライン合評会を行いました。

OBの塩澤さん(昭和60年卒)は仕事でオンライン合評会を経験されているということで今回はオンライン合評会の講評をメインでお願いしました。Zoomを使い各自が自宅から参加しました。増田と菊池さんは貸し会議室から二人で参加です。

今回は現役生6名の合評となりました。まずは出品者が撮影意図を説明してそれに対して講評する形で行いました。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜1〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

Kさん

「人間と雪の関係」

雪をテーマにした写真は古今多く撮影されている。新雪やダイアモンドダスト、樹氷など、美しい雪の表情を写した写真は特に多い。しかし、広大な大地を覆う美しい新雪は雪の一側面に過ぎない。雪国において、雪は厄介にも生活と密着しており、雪は人間の干渉を受けて絶えず変容する。踏まれた雪、積まれた雪、轍を刻まれた雪。雪国の人間が持つ雪へのアンビバレンツな態度(きれいだけど積雪は憂鬱で恐ろしい)を知るためには、これらの「人間と関係づけられた雪」という側面に目を向ける必要があると思う。この作品では、「人間と雪の関係」と銘打って、小樽での人間と雪の関係が窺えるようなスナップ写真を撮影し、組写真として構成した。「関係」にフォーカスするために、雪が写った写真だけではなく、雪かきの道具(プッシャー)や除雪ダンプのタイヤなども選んだ。本人談

塩澤さんから枚数を減らしてみたらどうかと提案がありました。Kさんは昨年の早稲田祭合評会で作品の枚数を減らすことをアドバイスされていました。今回は枚数は減ったもののさらに重なりのある写真をなくしてみました。確かにより明確に作品の主旨に近づいたと思います。それにしても昨年から比べると明らかに完成度が上がっていました。特に一枚目の写真は単写真で見せてもよかったのではという意見も出ました。

菊池さんからは色や質感がわかりづらいことを指摘していました。

オンライン上では端末によって色はバラバラで写真展会場で見るようには共有できないのは課題ですね。

他の作品はモノクロで女性を撮影した9枚の組み写真とカラーの短写真でした。

Kくんの女性のとらえ方が垣間見れる作品でした。

「閉ざされた時のなかで」「窓辺にて」(肖像権の関係で画像は掲載なし)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜2〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

Yさん

写真を始めたばかりとのこと。スナップの達人ソールライターが好きなそうで街を歩きいろいろな興味のあるものをとにかく撮影しているそうです。

「熱中すること」

熱中する被写体に対しての距離感と関係性が話題になりました。一枚目の写真は何度か訪れた飲食店店主に声をかけて撮影したそうです。塩澤さんから人物撮影では一歩踏み込んで撮影することでより自分らしい作品になるというアドバイスでした。

「ART」

塩澤さんから一枚目の写真のピントの位置について指摘がありました。Yさんが「あえてピントを外した」という発言に「あえて」はやめてくださいとのこと。写真を始めたばかりのときはとにかくストレートに被写体に向き合うことを大切にしてほしいと話していました。変化球な撮り方でなく真摯に向き合うことが写真の一番の成長につながるということだそうです。「まずはピントと露出をしっかりあわせることからですね。」とのこと。

「女性」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜3〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

Aさん

「目撃情報 7/21〜8/16」

作品の意図やメッセージ 大学のセルフポートレート課題を再構成したものです。「目撃情報」をテーマに、無機質な記録写真を目指しました。 作品制作の上での工夫 リズムが生まれるように色合いや構図のバランスを考えて組みました。 生物をイメージしているので、地面から辿り着ける場所に倒れるようにしています。落ちている面白いものを撮ってSNSに上げる感覚を意識しました。本人談

大学の自画像を撮影する課題で正面から自分を撮ってはみたもののしっくりこなくて、画面の中に横たわる自分を配置してみたらこれはおもしろいということで制作した写真だそうです。「自分自身の内面の状態は大丈夫ですか?」とまず塩澤さんからまさかの作品ではなく心の有り様を心配されていました。この指摘は本人も当たらずとも遠からずだったようで刺激を受けたようでした。それぞれの絵作りはしっかりしていてかえってそれが写っている作者本人がじゃまをしている印象を受けました。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜4〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

Iさん

「朽ちず果てず」

なかなか蓮の花が咲く時期にいくことができなかった場所にようやく訪れて撮影した一枚。塩澤さんがトリミングと再度調整をしてみました。本人は正方形のフレームに新しい感覚だったようです。菊池さんはこのままでもよいかもねといってました。幹事長のKさんは「蓮の葉の質感が素晴らしい、これは主役は葉っぱだ」と評価してました。

トリミング修正した写真

明るくしコントラストを強くして、花を引き立たせる

「徒然なるままに」

スナップしたものを並べて色(黄色、赤、オレンジ、ピンク)を思いついたようです。菊池さんから赤の止まれの標識はこじつけではないでしょうかと指摘していました。オレンジをイメージした逆光の人物の歩くシーンはいいねと評価していました。個々の作品の完成度にばらつきがあるのはおそらく色に縛られたからかもしれません。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜5〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

Yさん

「女王に惜別を」

コロナ禍に影響で引退した機体だそうです。本人からは「シャープさが足りない」ということで塩澤さんが修正してみました。明るくしてシャープをかけたそうです。だいぶ印象が変わりました。

修正後

「牛霧中」

雲海を撮影に行った時の写真だそうです。カメラ操作がうまくいかなくてピントが牛に合っていないようです。「これは作品になるのでしょうか?」いう本人の問いかけに菊池さんは「これはこれでおもしろいよ」という感想がありまりました。撮影者はこの雰囲気をどうしても人に見せたかったのでしょう。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜6〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

Aさん

今回は中国からの参加でした。カナダ、中国、日本と学生生活を送っているそうです。たくさんの女性ポートレートの写真です。「光の影」「雨降り」「闇の中に光」は肖像権の関係で掲載できませんがどれも完成度の高い作品でした。本人は欧米と日本での色彩感覚の違いに悩んいるようでした。確かに作品の色は日本人の感覚では派手で違和感がありました。現役生からは女性をきれいに撮っている、物語が感じられる等好評でした。

三田写真会・小野隆彦さんが写真展を開催します。

「写真の早慶戦」で交流のある三田写真会の小野隆彦さん(昭和49年卒)が写真展を開催します。

今回の写真展は超広角レンズで撮影した際に自分の足元が写ってしまったことをきっかけに禅家の語である 脚下照顧(人に向かって理屈を唱える前に、まずは自分自身の足元を見て己を反省すべきであるといった意味)を思いつき、エジプト、バリなど旅をする中で同じ手法で撮影してきた作品だそうです。ぜひこの言葉を考えながら作品鑑賞を楽しんでください。

「MIND YOUR STEP!  脚下照顧」

2020年10月7日(水)から10月11日(日)11時から19時(日曜のみ17時まで)

ピクトリコ ショップ&ギャラリー表参道

渋谷区神宮前4-14-5 Cbina表参道1F (03-6447-5440)

 

 

縄文・小川忠博さん写真展を見て 平3卒増田 智

伊豆高原の池田20世紀美術館にて開催中の縄文 祈りの造形 小川忠博写真展を見にいってきました。

地下にある会場はかなりの広さですがそれを生かした大伸ばしの写真が随所に見られました。

特に入口に展示された特大の縄文文様の写真2点は圧巻です。

都内での狭いギャラリーに展示された小さい写真は近づいてまじまじと見ないとよくわからないことがよくあります。そういう行為になれてしまっている身としては作品との距離を保ちゆったりと鑑賞できるの気持ちのよさを味わいました。

中にはこんな面白い土器もありました。信仰としての意味合いとは別に縄文人の個性的な感覚と遊び心が感じられ楽しめました。

今回の写真展を見ていて、自分が20代の頃に山形酒田の土門拳記念館を訪れたときのことを思い出しました。入ってすぐに大伸ばしの奈良東大寺お水取りの写真がいきなり目に飛び込んできて圧倒されました。

小川さんの写真展も入口の大伸ばしの縄文文様2点で心を掴まれました。360度の土器の模様を平面化して一枚の写真にするスリットカメラの技術なくして実現できなかった素晴らしい作品でした。全体的には写真の大きさの強弱に気を配り飽きさせない展示でした。

ちなみに同行者は写真そのものというよりは写っている被写体の「物語」(たとえば出土した場所がどこにあるとか、その土器の使用用途はどういったのもか、そして縄文文様の解説等)をもっと知りたいようでした。