◎「写真の早慶戦」で一番人気に推された昭和55年卒・六田知弘さんの写真集(A4変型 96頁 2500円)が平凡社から発行されました。
東日本大震災から3週間後、私は宮城県仙台市の荒浜に立っていた。津波による想像を絶する惨状に、ただ立ち尽くすほかなかった。
震災9か月後、ふたたび訪れた被災地で、足元に落ちているモノたちを白い紙の上に載せて撮りはじめた。できる限り、分け隔てることなく紙に載るものは片っ端から撮っていった。
モノには時が堆積している。私は「モノの記憶」を力メラによって写し撮ろうと思った。それから1年の間に撮った総数は5000点にもなろうか。
しかし、それらのモノのほとんどは、ガレキとして処分されたり、自然に朽ちたりして、いまはおそらくこの世に存在しない。
これらのモノたちの写真をまとめるにあたって、本当に多くの方々のご助力をいただいた。発表する前に被災地に住む人、あるいは被災地を故郷に持つ人たちに、あらかじめ写真を見ていただいて、その感想をお聞きした。
何よりも、これらの写真によって震災で傷ついた人の心をより深く傷つけることになることを恐れたからだ。しかし人びとの反応は思いのほか好意的なものであった。私が逆に励まされた。心の底から感謝しています。(略)ー本書「あとがき」よりー
2013年11月六田知弘