現役新人展を見て?平3卒・増田 智+昭45卒・白谷達也

◎現役新人展を見て?平3卒増田 智

 

昨年も新人展を拝見しましたが、まず初めに感じたのは今回は全体に絵作りができているということでした。

それぞれが個性があるのはもちろん、全体に安定しています。

聞くと新人のTくんがまとめ役となって今回の新人展を仕切ったとのことでした。

彼は今回、唯一銀塩写真でモノクロの「光線」を出品していました。

小中高と写真をやっていただけあって自分なりのスタイルがあり、今後早大写真部でどんな写真を撮るのか楽しみです。

他には展示を工夫して今回インパクトが一番あった「Two colors of world」  は訳すと世の中は二色でできているということでしょうか、写真の一つのアプローチとしてはおもしろいですね。

「夏の後ろ姿」「没頭」は撮影者のそのとき思った空気感がでていてよいですね。

「安芸の暮夜」も視点を変えた三枚の写真構成でバランスがよいですね。

今回の新人が次回の早稲田祭でどう変わっていくか、変わらないか期待しています 

 

「Two colors of world」

「光線」

  

「夏の後ろ姿」                       「没頭」

    

「安芸の暮夜」

 

◎新人展を見て?昭和45卒・白谷達也

 学年を問わず前年度に入部した新入部員の初めての写真展ということでした。写真経験の豊富な人から初心者までの作品が並んでいたようですが、第一印象は「まとまり過ぎでは」と言ったところでしょうか。確かにこりゃあ酷い、よくこんなものを展示したもんだ、という写真はありませんでした。

欲を言えば、初心者には初々しく粗削りだがワイルドでビックリするような作品を期待したいところですし、経験者にはそれなりの経験に裏打ちされた作品を期待したかったかな???。

「祭りの後」

 祭りが終わった後の静かなゆったりとした感じが良く出ています。海中に大人4人、波打ち際に子どもが1人。斜めの波が画面を引き締めていて、向こうからは新しい波がやってきていて画面に動きを作り出しています。良いシャッターチャンスと言えましょう。好きな作品でした。

「遭遇」

 何かに遭遇した猫の目と姿態に緊張感が溢れています。ピントは目にガッチリ来ていて、ストレートで好感の持てる作品。

「Les Amoureux」

 映画の1シーンのような、「絵に描いたような」感じの作品で、それはそれでロマンチックなんですが、やや予定調和に過ぎるのかもしれません。何だかいつか見たことのあるシーンだなって感じですね。撮り慣れているようなので、胸がキュンッとするような作品を期待します。

  

 

平尾敦のN.Y.日記 ♯1

◎平尾 敦のN.Y.日記 ♯1 (2013.09)

 2011年卒の平尾敦と申します。

 今夏よりニューヨークの国際写真センター(International Center of Photography)にて1年間、ドキュメンタリーとフォトジャーナリズムの勉強をさせていただくことになりました。
プログラムへの応募に際しては推薦状の作成をはじめ、稲門写真クラブの皆様から多大なるご支援をいただきました。そして、7月に開催していただいた壮行会では、ニューヨークでの生活ぶりを稲門写真クラブのホームページでレポートしてみないかというお話を頂きました。様々な業界の大先輩方に私のことを知っていただける貴重な機会と思い、拙文ながら書いていきたいと思います。
 
初回は大変恐縮ですが、私自身に関して書かせていただきます。
 
平尾 敦(ひらお あつし)
1987年 長野県生まれ
1988年 渡米 ロサンゼルで幼少期を過ごす
1993年 帰国 長野県の自然を駆け回った少年時代
1998年 再渡米 ロサンゼルスの日本人学校で小・中学校を卒業
2003年 帰国 早稲田大学高等学院入学
2006年 早稲田大学教育学部入学 同時に写真部入部
2009年 本年より2013年まで北アルプス北穂高小屋を撮影
2011年 新宿コニカミノルタプラザで個展「it is there」
                  コニカミノルタ フォト・プレミオ2011特別賞を受賞
      早稲田大学教育学部卒業
2012年 南アフリカの雑誌社にてインターン、タウンシップを中心に取材
2013年 再々渡米 ニューヨークICPに留学
 
少し説明に時間のかかる生い立ちのため、まずはじめに略歴を書かせていただきました。
また、在学中にはこの生い立ちを写真で表現することも試みました。お時間があれば、動画形式で公開しておりますのでご覧頂ければ幸いです。(http://www.youtube.com/watch?v=eaAP9zAWH-I)
 
このような経緯から8月1日に渡米した私には、アメリカに「帰ってきた」という感覚が少なからずありました。その反面、新天地でこれから這い上がっていくんだという感慨はあまりありませんでした。
 
ニューヨーク到着から1週間ほどで9月からの住処も無事決まり、8月の残り3週間ほどはロサンゼルスに住む姉のもとで厄介になることになりました。そこでふと思いついたのが「バスでニューヨーク入りしよう」という考えでした。調べてみると、所要時間は2D18H35M(2日18時間35分)、料金は180ドル(約18000円)。LCC(格安航空会社)全盛のアメリカで、そのさらに下をいく価格。一方で悪評も多く聞く交通手段ではありました。
しかし、「バスでニューヨーク入りする」という言葉の響きに完全に当てられた私はバスのチケットを予約しました。
 
出発3日前、ロサンゼルスのダウンタウンにあるホテルに移った私は、長距離バスのターミナルまで歩いてみることにしました。ターミナルはダウンタウンの中心部から7番通りを東に3キロほど進んだ場所にあります。そのうち東側2キロはスキッドロウと呼ばれる全米最大規模の犯罪多発地帯の外周部にあたります。
 
この距離にして3キロ、時間にして30分の間に景色はめまぐるしく変化します。せわしなく働くビジネスマンから浮浪者、ドラック中毒者、傷痍軍人まで。アメリカの縮図と言える風景がそこにはあります。(掲載写真3枚)
 
 
 
そんな景色を撮影しながら、「子供の頃絶対にやっちゃいけないと言われたことを大人になってからやってるんだな」という自分の原点を感じ、ロサンゼルスを出発点にして良かったのだと思いました。
  
次回は北アメリカ横断バス、ニューヨーク到着編を予定しております。 
 

「春季展」を見てー昭和42年卒・漆原勝造ー

自分の作品を示してプリントの違いについて説明する漆原勝造さん。 2012.04.12「Art Gallery CORSO」

約40年ぶりに早大写真部現役の写真を見させていただきました。先ずは、全体を通しての感想です。

(1)一部作品を除くと、写真の基礎力が不足しているように感じました。

(2)ピントが必要なところにぴしゃりときていません。

(3)デジタルプリント技術がかなり未熟。しっかりとした基礎知載の上に基礎技術を積み重ねてください。 

(4)良い作品をたくさん見て(読んで)ください。写真集だけでなく生写真も(特にモノクロは)。

(5)もっと光に敏感になってください。

 昼間良い場所を見つけたら、朝なら、夕方なら、雨の日なら、逆光なら、人を入れたら、などなついて考えてみてください。更にカラーかモノクロか、等々と考えると表現域が広がります。

(6)カメラ・アングルも追及してください。

 昔、濱谷浩氏が早大写真部の例会に来た時、アドバイスの一つとして「アイレベルで撮ったら、ローングルで次は高い所に登ってハイアングルからも撮るように」とおっしゃっていました。

(7)全体的にもっと被写体にぐっと近づいてください(望遠レンズは使わず)。

 その方がテーマを見る人にハッキリと伝えやすいと思います。ロバートキャパも「写真が物足りないなと感じるならばもっと被写体に近づくことだ」とアドバイスを残しております。

 ちょっと辛口になってしまいましたが、全体的にもう少しの気配りで写真がぐっと良くなります。その芽が出かかっていますから、敢えて厳しい感想を書きました

 ついでに、展示されている写真のカラー色調があまりにもバラバラでしたので、気になって受付の方に少し質問 をさせていただきましたが要領を得ませんでしたので、プリントについてごく基本的なお約束事を書いておきます。

(1) 部室の天井照明は色評価用5000ケルビンの昼白色蛍光灯にしてありますか。(もし部屋の構造上、他の光線が入る場合は衝立かカーテンで遮ってください)

(2) そのモニター画面の周りの壁はグレー等の無彩色になっていますか。

(3)プリント作業を行う方はせめて上着はグレーか黒の無彩色にしてください。

(4)最低でも月に一度はモニター画面のキャリブレーションが必要です、その際モニター点灯してから30分以上経過してから作業に入ってください。

(5)まず、コンタクトプリント(べた焼き)を作ってください、そこからプリントする写真を選び出して、まず2Lサイズにストレートプリント(全く手を加えない画像)をして、その写真を良く見てどう手を加えるか目標をたてます。

 もしコンテストや展示用にA4以上にプリントする場合は安い紙でなく高い紙をお勧めします。比べればはっきりとその違いがわかります。(高いカメラを使って安い紙でプリントをしているアマチュアカメラマンが多いと梶原高男先生がおっしゃっておられました)。高いカメラと高い交換レンズを使い、安い紙にプリントするよりコンパクトカメラ(良心的に作られた)をいつも携帯して数多く撮り、その分プリンターが壊れるほどプリント作業を行うことをお勧めします。

 去年、川田喜久治プロとお話しした時、「いつもリコーのコンパクトカメラを携帯しているよ、しかしプリントは1枚に丸一日かける時もある」と。そしてA3にプリントされた写真(未発表)を20枚ほどを見せていただきました。紙は外国製でした。

 
 更に言いますと、来場された方々に自分の写真を見ていただくという気持ちが感じられない作品が少々です見受けられました。写真の上手下手とは違いますが、その事を今回の展示から感じました。
 
 とは言え、年6回も写真展を行っていると聞いて、その熱意に感動すら覚えました。
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 嘗て土門拳氏が「写真の批評とは自己暴露の所産である」と書いております。拙い私の写真評ですが皆さんと同じくらい写真が好きですから、恥ずかしながら以下に一部の写真について意見を述べます。

☆「位置について」横位置カラー1

市電と車3台と自転車1台が赤信号で横断歩道手前で横一列に停車しています。ただそれだけの写真で終わっています、もしその横断歩道に老犬が1匹とぽとぽと歩いているとか、何かもう一つが無いと写真として面白くないですよね、私が言いたいのは1枚の単写真にもドラマ性がほしいのです、ぐっと見る人を引き付けます。

 

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☆「待つ」横位置2枚縦位置 2枚モノクロ4枚組
 写真左2枚は比較的ノーマルトーン、右2枚は上の写真が白とび、下1枚は黒つぶれあり一種の廃屋写真と思われますが、もっとピントピシャリ、そして階調もこの場合はしっかり出したほうが良いと思います。そしてタイトルも再考を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆「場末」 横位置モノクロ1

 場末であることはわかりました。作者はそれ以上のことを伝えたいと思ってシャッターを切ったのでしょう、それこそがテーマです。それにはこの時間帯(光線を含めて)がベストか、風景スナップのときには天候や光の当たり具合も計算に入れてください。モノクロはカラーより寡黙ですがそれだけに階調にもっと拘って下さい。

☆「花ぞ昔の」 モノクロアルバム(ポートフォリオ)24枚組
 
 最終ぺ一ジの文章で11年ぶりに訪れた故郷、さよならと眩いて去るまでの心情を書いておられ、24枚のモノクロ作品でポートフォリオ風に提示されております。24枚中4枚が包帯を巻いた指の写真で時間経過を物語らせているようです。同時出品の「ひとりぐらし」と作者は同じで、モノクロ、ローキー調と手法もほぽ同じ。私の私見ですがどちらも10枚程度に写真を絞った方が見る人により雄弁に語りかけてくると思います。このテーマからしてそんなに多くの枚数はかえって味を薄めてしまします。組写真の枚数を減らし再編集するには、あなたが尊敬する写真人にセレクトしてもらうのも有りです。あなたの世界が広がります。
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☆「雨」 横位置カラー1  
 渋谷駅前か薄暗くなった雨の横断歩道を傘をさした多数の人が歩いています。土田ヒロミ氏の作品に「砂を数える」という作品群があります。8×10で撮った克明に一人一人の顔が写っています(本人自身も合成で写りこんでいるとつい先日当の御本人にから聞きました)。しかしこの写真は単に情景写真で終わっています。雨よし、夕方よし、人ごみよし。
 もし私がこの場にいたら28ミリ単レンズをつけて人ごみの中で連続的にシャッターを切りたいと思います。ウィリアムクラインの「ニューヨーク」をどこかの図書館でご覧下さい、この写真集若き日の森山大道氏に多大の影響を与えた名作です。
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☆「午後の海岸」 横位置カラー1
 下四分の一程の所に水平線があり、上は雲が少々とあとはスッキリと晴れ渡った青空、下は茶色い砂浜です。写真の内容よりも見た瞬間にカラーバランスの崩れが目に飛び込んできます。プリント技術の中でもカラー調整は実はなかなか難しいテクニックなのです(私も苦労しておりますが)。デジタルプリントの基礎勉強をしてください。 

 

 

 

 

☆「ミントブルー」横位置カラー1枚のカラーポートレート
 まずモデルさんの左手のこげ茶のブレスレットをはずして下さい。水色の衣装の腹部のしわはシャッター前に治してあげて下さい。モデル撮影では手の扱いが難しいものです。
 全体的にもっと柔らかいライティングを。フレーミングももっと左に頭部を入れて腹部はカット、髪の毛の柔らかい質感を出すように。
 うるさいことを言ってごめんなさい。実は早大写真部にいた時はポートレートサークルに属してモデル撮影(屋外やスタジオで)を何回もやりました。ライティングやレフ板の使い方を通してもっと光に敏感になってください。リチャードアベドン写真集を一度ご覧ください、ライティングの基本です。

 

?☆「夜明け前」 横位置カラー1

 夜明け前のマンション群ですね、冷えた早朝の空気感は伝わります。露出にも工夫が感じられます。構図(私はこの言葉が嫌いですが)も悪くありません。しかしその先が無いのです、これからが作品へと続く道なのです。

?☆「allegorical photography」 モノクロ4枚組

 1枚目の写真はもっとピントをしっかり出して下さい、もっとクローズアップしてこの質感を出してほしいのです。1枚目から4枚目までの写真にもっと物語性がほしいと思います。作者はいろいろと苦労しているのは分かりますが、もっとドラマチックに展開してください。そのチャレンジ精神に次回作を期待します。
 また、モノクロ写真を額に入れるのはよしとして、ガラスでカバーされると見る人の顔や向かい側の壁面が写りこんで正しく写真を鑑賞できません、せめてガラスは無しにしましょう。
 撮影者には鈴木清と須田一政のモノクロ作品をお勧めします。モノクロトーンの中に情感がこめられています。
 最後に、「あなたの代表作は」と聞かれてチャップリンは「次回作です」と答えております。私も次回作のために明日もカメラを持って出かけるとしましょう・…
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                           【昭和42年卒 漆原勝造】