現役生「春季展」が開催されます

毎年OB数名で訪れている春季展が今年も開催されます。

新人から二年目、三年目を迎えた学生といろいろな写真がみられる機会です。

季節も春を迎え温かくなってきたので、たまには学生の写真を見に顔を出してはいかがでしょうか。

 

昭和46年卒・倉田光一さんが写真展を開かれます

◎昭和46年卒の倉田光一さんが写真展を開かれます。

「東北から遠く離れて」

ー被災地をめぐる旅 2011年?2013年ー

☆期間:2014年4月11日(金)?4月13日(日)の3日間

4月11日(金)13:00?20:00

4月12日(土)10:00?20:00

4月13日(日)10:00?18:30

★12日(土)の16時?17時は作者は不在です。

☆場所:「神奈川県民センター」1F展示室(横浜駅西口ヨドバシカメラ裏)

★作家のHPもご参照ください。

http://www.nicophotolibrary.sakura.ne.jp/

 

 

平尾 敦のN.Y.日記 #4

◎平尾 敦のNY日記 #4(2014.03)

ニューヨークは20年ぶりの大寒波ということで、生粋のニューヨーカーたちも今年の冬は異常だと口々に話しています。我々学生も6月に展示する最終課題に向けて撮影を進めていますが、外で撮るテーマを持つ者にとってはかなり厳しい環境です。
 
厳しい冷え込みは続きますが、3月に入っていいニュースもありました。1月に申請していた奨学金の発表があり、成績優秀者を対象としたWall Street Journal のPhotojournalism Scholarshipを受賞することができました。
早稲田にいた時は奨学金を頂けるような成績とはほど遠かったことを思い、今は好きなことをしているのだなと実感します。
 
 
〖セントラルパークにて〗4X5
 
また、2月から始まった冬学期は、基礎中心だった秋学期とは大きく内容が変わりました。
奨学金や写真売り込みに必要な書類製作を学ぶWriting講座や、動画・音声・写真を一つの作品としてまとめるマルチメディアの講座、ジェームズ・ナクトウェイなど著名な写真家のプリンターとして知られるブライヤン・ヤング氏のモノクロプリント講座、4×5をつかった大判カメラの講座、他にも週末の集中講座にファイナルプロジェクトの撮影など、盛りだくさんの内容です。
 
 
〖イーストハーレムにて〗4X5
 
休みの日も課題に追われる日々の中で、最近ではニューヨークという街と写真家の距離の近さを感じます。例えばイーストハーレムを大判カメラを担いでウロウロしているだけで、「シノゴだろ?フィルムは何?」と話しかけられます。それも1人や2人だけではありません。時にはその場で「私は装丁をやってるんだけど、、、」と名刺交換や商談まで始まります。
 
この街に無名の写真家が何人埋もれているのだろうと考えるだけで恐ろしくなることもありますが、頑張ろうというやる気が自動的に充電される街とも言えるかもしれません。
 
まだ現在取り組んでいるテーマはお話できませんが、6月に向けてより一層頑張りたいと思います。
 
〖Brian Young氏の暗室講座〗
 

中藤毅彦君(平成6年一文中退)写真展「STREET RAMBLER -Paris」インタビュー

 昨年、東川賞特別作家賞を受賞し、写真界の最先端を疾走している尊敬すべき私の後輩、中藤毅彦君(平成6年[1994年]一文中退)の写真展を訪れました。その様子をインタビュー形式でお伝えします。

※中藤毅彦写真展「STREET RAMBLER -Paris」は、東京新宿の「コニカミノルタプラザ」で3月6日(水)まで開催中です。ぜひお立ち寄りください。
http://www.konicaminolta.jp/plaza/schedule/2014february/gallery_c_140225.html
中藤毅彦オフィシャルサイト
http://takehikonakafuji.com/
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◎インタビュアー:平成2年(1990年)政経卒/金城正道
・久々に中藤君のストリートスナップを目にしたように思います。話では「この頃おとなしかったので」ということでしたが?
中藤:このところ都市風景が中心でしたが、またストリートスナップに目が向いてきています。ストリートスナップは気合いが違います。自らを奮い立たせ、被写体にカメラを向け、とにかくシャッターを切る。切り続ける。それが全てです。
・様々な都市で道行く人々にカメラを向け続けていると、こわい思いをすることもあるのでは。
中藤:あまり感じたことはありません。時に睨まれることもありますが、シャッターを切った後で目で挨拶したりすることで、わかってもらえていることが多いと感じています。ただ、一日中歩き回っても全く撮れないこともあります。
・どのような時ですか?
中藤:やはり、被写体から手ひどく拒絶された時などです。とても落ち込みます。そのような事もあります。でも、それでも這い上がってシャッターを切り続けるしかない。それが宿命です。
・私は、最近の若い人たちの写真に「人が写っていない」ことに疑問を感じています。それらの写真は、中藤君の写真の対極にあるものです。
中藤:内省的で「自分探し」や「ボクを見て」という思いが強いのではないでしょうか。しかし、そうではない挑戦的な若い作家もたくさんいます。私は「相手」や「街」を『そのまま』写し取りたいと思っています。
・それにしては中藤君の写真は「中藤!」が出ているように思います。
中藤:(笑)あまり意識したことはないのですが。自然とそのような形が出来上がっているのではないでしょうか。
・そうですか。結果的に作品のスタイルが私の頭の中で作家の実像と結びついてきているのでしょうね。

・ところで、パリの撮影について聞かせてください。
中藤:3年にわたって撮影しています。パリの人々は写真に対してとても意識が高く、ブラッサイ、サルガドやパリフォトの写真展などに列を作って並んでいました。あまり有名でない私の写真展にも多くの人が飛び込みで立ち寄り、900ユーロ(12万6千円)近い価格のプリントも何枚も売れました。
・撮影で意識していたことは?
中藤:これまでパリは多くの写真家たちに撮られてきました。私もこれまでの自分の写真を見直し、また過去の偉大な作品群に改めて向き合い、ステレオタイプに陥らない、これまで撮られていない今のパリの姿を捉えようと思っていました。
・具体的には?
中藤:例えば、現在のパリにはアフリカからの多くの移民(黒人)がいます。パリでも特別の存在感を放っているバルベスやヴェルビルなど、彼ら移民の街に入り込んで撮影しています。観光などではわざわざ行かない場所です。今回の写真展の作品では、彼らの姿の一部を捉えることができたと思っています。


・これからは?
中藤:パリは引き続き撮り込んでいくつもりです。ただ、パリでは私は異邦人です。一方、私が生まれ、生活の拠点でもある「東京」への思いは強くあります。20年も撮り込んでいますが、「まだまだではないか」という思いもあり、ライフワークとして取り組み続けて行きたいと思っています。
・最後に、現役の早大写真部のみなさんに何かメッセージを。
中藤:学生の間は自由な時間や機会に恵まれていることと思います。それらを有効に使って、とにかく量を撮る! 早稲田の場合、卒業して写真以外の様々な道に進む人が多いと思います。でも、学生の時にそうやって本気を賭けて撮り込んだ経験は、そのあと写真の道を歩まなくても、色々なところで全然違うものになって必ず表れてくるはずだと思っています。
・私も20年、会社員をやってきましたが、本当にそのように思います。ありがとうございました。
 

日本写真協会(PSJ)会報に昭和44年卒・平嶋彰彦さんの記事が紹介されました

 公益社団法人日本写真協会(PSJ)の会報、2014年・春456号の巻頭記事に、稲門写真クラブホームページの記事が引用・紹介されました。

 
 
巻頭記事は「桑原甲子雄にみる昭和写真史」というタイトルで、同協会会員で日本カメラ博物館運営委員の白山眞理さんによるものです。稲門写真クラブ会員で元毎日新聞社出版写真部長の平嶋彰彦さんが編集にあたられた、「私的昭和史 桑原甲子雄写真集」を発行することになったいきさつについての一文が引用されています。
 
2013年10月23日「私的昭和史 桑原甲子雄写真集」(昭和44年卒・平嶋彰彦)発行のお知らせ
 

現役生の3サークル有志写真展にいってきました 平3卒増田 智

◎【WPS】+【シャレード】+【リコシャ】の写真3サークルの有志による写真展 

WPS現役生のUさんからお誘いいただき、菊池(昭42年卒)白谷(昭44年卒)宇野(昭45年卒)増田(平3年卒)のOB4名で写真展に行ってきました。11名の方が出品していました。

今回の主催者、waseda_photo3は早稲田大学にある3つの写真サークルの中でワークショップなどを通じ様々な写真へのアプローチを目指した有志のグループで、月2回の研究会を行っているようです。

HPを拝見するといろいろな試験的撮影や作品制作方法への挑戦が伺え、また外部の人をよんでの講評会をしていておもしろそうです。

http://waseda-photo3.com/

たまたま訪れた日も公開講評会をやっていましたのでギャラリーとして参加させていただきました。

出展者がまず撮影意図をプレゼンして、その日のゲスト(この日はWPSのOGでフォトグラファーの黒田菜月さんと友人の藤掛さん)が講評し、最後に会場の人から質問してもらう形で進み、この日は5名の出展者が話していました。

全体の印象としては技術的なことや写真の知識というよりは、コンセプトや撮影者の心情が話の中心といったところでした。

そのなかで今回の案内をいただいたUさんの作品「ダイニング」は、一見何の変哲もないようないろいろな家族のダイニングルームを撮影していて、都筑響一さんの「TOKYO STYLE」をつい思い出しましたが、違うテイストの先にあるUさんのある程度の客観性を感じることのできる写真であり、次回作が楽しみになりました。

我々が伺った日の翌日に行われたUさんの講評会のことをご本人にお聞きしましたら「私の講評ですが、テーマに対してはどの方にもお褒めの言葉をいただきました。『コンセプトがしっかりしているし、見る人が自由に読み取れる』とのことでした。ただ、やはり構図や距離感が中途半端だとの感想をいただきました。自分でも納得することが多く、もっと突き詰めて作品を作っていきたいと思っております。」とのことでした。

 

 

 早大写真部のUさんの作品 「ダイニング」

 

会場での講評会風景

「早稲田祭展」現役+OB合評会ドキュメント vol.4

早稲田祭展合評会報告vol.4

(最終回)

 
昨年11月10日(日)に深見幹事長以下現役学生14名とOB5名が学生会館に集いました。
4時間半に及んだ合評会の最終報告です。
 
★参加者
・ 昭和41年卒・鈴木龍一郎さん(写真家)
・ 昭和42年卒・菊池武範さん(写真家)
・昭和59年卒・H.Okadaさん(写真家)
・ 現役学生(1年生?5年生)14名
 
(幹事会メンバーの平成3年卒・増田 智、昭和45年卒・白谷達也が記録係りを勤めました)
 
【初めに一言】
(前3回と同じ内容です)
鈴木:3日に早稲田祭を見せてもらいました。私の場合、人の写真を見るとはどういうことかと言うと、ダイアンアーバスとか土門拳とか、最近ちょっと関心持ってる志賀理江子とか、誰の写真でもいいんだけど、その人の写真を見て、私がどういう刺激を受けるかどうかというのが評価の基準になっているんですね。
 
今回の早稲田祭展を期待していましたが、残念ながら期待を裏切られました。「行儀が良過ぎる」という言い方が適当かどうか分からないけど、そんな感じを持ったからです。
というのは、亡くなった小説家の吉行淳之介さんが、「小説とは何かと言うと、最大公約数から外れた者がやるものだ」と言ってるんだけれど、写真も同じで、要するに常識とか、世の中の一般的なものを受け入れられない、或いは受け入れたくない人間がやるもんだ、ということなんですね。
 
で、それが、私としては真面目に見たつもりだけれど全く感じられなかった。あと、もう一つ、写真の「時代性」、つまり原発であるとか、ソマリアで内戦であるとか、何十万死んでるとか。或いは今、あなた方学生さんの就活の問題とか、或いは恋人と上手くいくとかいかないとか、そういう大状況とか小状況とかあるわけだけど、今の時代性ってものが、こないだの早稲田祭の写真展見て何にも感じられなかった。それがちょっと残念です。
 
菊池:辛口のご挨拶でしたが、次はぐっと甘口になります。鈴木さんの一年後輩、昭和42年卒業です。
 実はね、今年はケネディ大統領暗殺の50周年になるでしょ。1963年、考えてみたら僕はその年に早稲田に入ったのね。一年生でも生意気に「将来やっぱり写真にかかわる仕事をしたい」と、その当時既に恥ずかしながら思っていました。
 皆さんの写真を早稲田祭でも展示で拝見しましたけど、それに加えて、今日は本人の肉声を聴きたいと思ってやってきました。
 
H.O84年卒業で、かれこれ30年前の卒業です。
 その当時と温度差というか、時代背景の違いがあるかと思いますが、早稲田祭展を見て「うちらの頃と変わってねえなあ」と思った。皆んなアマチュアだからね基本的には。ただアマチュアだけども写真やる以上は、そこで何かを自分で獲得してくるという、そういうことが出てきた方がこれから人生何やるにしろ足しになると思う。まあ、機会あるごとにね今日はそういうことをお話します。
 
 
 

★★★★★★★★★★
E・Yさんの写真を見る
 
E.Y これはまあ猫なんですが、正直今年の早稲田祭は作品を売れるということで、売れそうなものを置いておきたいな、と、ちょっと下心をもちながらA3ノビまでのばしました。(笑い)
 
菊池 売れましたか?
 
E.Y 売れませんでした(笑い)
 
 で、一番写真の王道とは外れているものなんですが、ある意味外れているのはそちらの横向きのブックなんです。
    このブックの主旨は、えっと私がかなり記憶力が悪いので、どのようなレンズをどのようなパターンで使えるか、というのを自分用にメモしたものになります。
 
菊池 写真は手馴れているよ、撮り方がね。
 
E.Y いや始めて一年ぐらいですね。で、こちらの写真が一番と思われると思いますが、カメラの中のファインダーの第一レンズ視度調整ダイヤルの部分になります。
   
  実は早稲田祭の二週間か三週間前に、車のトランクからカメラを落下させまして、ここの部分が壊れました。それを直すために、分解するとどうやって戻せばいいのかわかんなくなってしまうんで、写真を撮らなければいけなくて、どうせだからそれを作品にしようと友達からキャノンのカメラを借りまして、マクロレンズを使って、撮ったのがこちらになります。

 

菊池 ただのメモだけどおもしろい。
 
H.O で、これ修理したの?直ったの?
 
E.Y    あっ、できました。
 このカメラはだいぶ古くキャノンの1DS初代ですね、2002年発売の機械なんで。
 
白谷 さすが理工学部だね。(笑い)
 
E.Y  はい、ただレンズが枠から外れていただけだったので、それを付け直すだけでなんとかなりました。
 
菊池 ぼくはこれね、割合おもしろいと思ったの。
 
H.O まあ趣味の世界だね。
 
菊池 その趣味の世界をこういうふうに撮っちゃうというのがおもしろくなるんだよね。いわゆる作品になりうるかもしれないというのを感じさせるんだよこれ。単なる分解メモと思えるけどね。
  どうしてあんなに黄色いの、もしかして電球の下で撮ったんじゃない?
 
E.Y そうですね、電球というか普通の電球ふたつに、一応青フィルターかけて、ホワイトバランス一致させてから、一気に現像、あの時間がなかったから、急いで処理しようと一括処理で行いました。
  
  はい、けっこう自分の思い通りの写真になりました。レンズの写真の方で黒をつぶさなくて眠たい写真が多くなったと友人にいわれたのですが、それはそれで私としては好きな処理であるんですが、まあ少しぐらい気持ち悪い絵も作ってみたいと思いまして。
 
   
 
  ただこちらの猫とかもそうなんですが、額に入れるのがけっこう難しくて。難しいというか私が慣れていないせいで、かなり埃が混入してしまって、しっかり見ると埃とか変な毛とかが、大量に入って、なんか悲しいなと思います。
     
    そちらのほうは日頃スナップしたのをまとめたものですね。使っているレンズはかなり安いものです。
  
菊池 シグマの18ミリ。どうしてこんなになっちゃうんだろうね。
 
E.Y はい、だいたい3万円以下。いちばん安くて2000円、3000円だったかな、のレンズです。
     ちなみに私くしがキャノン使っている理由は、中学高校時代の友人がキャノンを使ってて、友人からレンズを借りないといけなかったからです。ニコンの人はほとんどいなくて。
 
 ブックは枚数を稼ぐために、ちょっと自分でもどうかなという絵がいくつか、それについては反省しています。猫写真が多いのは猫が好きでもないんですが、撮るのは楽ですね。撮るのが楽なのと楽しいのでなかなか多くなってしまいます。
 
 
白谷  もう長く写真やっているの?
 
E.Y 大学に入ってから1年目はフィルムカメラでちょっと。父がフィルムカメラ貸してくれたのと、また祖父からもフィルムカメラなんかを。
 
白谷   何んていうカメラなんですか?
 
E.Y 父がEOS5QDで、1990年ぐらいの普通のオートフォーカスカメラで。
  で、父方の祖父がキャノンのA-1ですね。で、母方の祖父が、もう亡くなっているのですが、オリンパスPEN—Fを貸してくれまして、私がそれを遺品としていただきました。
   
     で、それを使ってパシャパシャ撮ってて、2年生になる直前にデジタル一眼レフを、ヤフオクで1万円で購入いたしまして、それからちょっとづつレンズが増えていきました。
 
  私くし射撃部でライフル射撃をやっておりまして、それがあまり忙しくなくなったので写真部に入りました。
 
A.S 彼、夜景400ミリでぶれないで手持ちで撮れるので。
 
菊池 あーそうですか、やっぱり射撃部だね。
 
白谷 上手だよね、すごく上手。
 ★★★★★★★★★★★★
S.Sさんの写真を見る

S.S こっちの4枚が壁に出していた作品で「宇宙」ってタイトルです。こっちが「8月の秘密」っていう1枚だけ の作品で。

 「宇宙」なんですけど。春ぐらいから「生活と宇宙」っていうテーマで撮りたいなと思って。
あとなんかゴミゴミしたものときれいなものどっちもあるから楽しいよな、みたいな感じで撮ろうと思ってたんですけど、夏休みくらいにデジタルカメラを買いまして、それまではずっとフィルムで撮ってたんですけど、デジタルになったらマクロができるし、あと撮ってすぐ見れるから色がきれいなものを撮りたくなってしまって、気付いたらお花畑になってたのです。(笑い)
 
  で、なんか1枚コスモスの写真があるのでコスモスと宇宙をかけて、「宇宙」というタイトルをつけました。こっちの3枚がデジタルで、こっちはフィルムで撮りました。
 
 宇宙
 
 こっちの写真なんですけど、これもデジタルで撮った写真で、「8月の秘密」というタイトルなんですけど。
 えーと、これは地元で撮った写真で、地元は福島県の猪苗代町っていう所なんですけど、何かその帰省したときに、何んかこうトンネル抜けて森ができる感じで、その何んていうんでしょう、小さい頃を思い出して、何んかその楽しいだけじゃなくて、熊とかが普通に出る町なんですけど、小っちゃいときはそういう森とか、今だと怖くては入れないですけど、小っちゃいときはぜんぜん気にしないで入ってたなって、そういう思い出が楽しいものだけじゃなくて、ちょっと怖いところもあるなと、そういう明るい思い出だけじゃない感じを出したいなと思って「8月の秘密」というのをつくりました。
 
鈴木 またタイトルから始まっちゃうんだけどね、私の場合。会場で度胆抜かれたのね、「宇宙」っていうタイトルに。
 
 怪訝そうな顔してるけど、おそらく、僕が言うことほとんど通じそうもないけど、宇宙っていうのは大変なことなんだよね。せめて「マイコスモス」とか「私の宇宙」とかなら。
「宇宙」って言い切ると、天文学だけでなく、結局、我々は何故生きてるのかとか哲学的な問題も入ってくるわけだよ。そのくらい宇宙っていう言葉は深くて広い意味を持ってるんだよね。それをこの写真につけるとは、ちょっと僕は度胆を抜かれました。
 
  あと、美しいものを美しく撮るって、今言われたよね。でこれとは関係ないか、いや関係あるんだけど、この中ではこの写真がぼくは一番良いと思うね。
 たとえば富士山のご来光って美しいことになってるじゃない。で、あれ本当に美しいのかどうか、あるいは尾瀬の四季、尾瀬の紅葉を見るとみんなきれいって言う、カレンダー見て皆んなきれいって言う。あれ本当に美しいのか?
 
 美しいものを何が美しいのか何が美しくないのか、と考えるとこから写真は始まると僕は思ってます。だから、こっちはあまり関心ありません。
そして、こっちはなんで良いんだろうって思うんだけど。やっぱりハイキ—の効果なのかなという感じと、まあいろんな理由がありそうだけど、他とは何かが違うんだよね。
 
 あと「8月の秘密」だっけ、これも昔「八月の濡れた砂」っていう映画と歌があったんだけど、そこら辺の関連で、この写真でタイトルが「8月の秘密」っていうのはないだろうって思いますね。
どう思う?これはこれで「宇宙」で良いんだ、タイトル、そう思いますか?
 
 
八月の秘密
S.S う??ん、そんなに深くは考えてなくて、半分ダジャレなので、あんまりそんな意味があるかと聞かれたら、ないんですけど。
 
鈴木 この写真ができてからタイトル「8月の秘密」っていう、それとも先に「8月の秘密」っていうフレーズがどっか頭にあって、この写真を撮ってつけたの?
 
S.S うんと「8月の秘密」っていう歌のタイトルがあって。歌なんですけど、それが頭にあって。
 森に行ったときに、あ?そういえば、昔はこんなこともあったな、ってみたいなことを考えて。
 そうですね、その場所に行って撮る時はわりと既にそういうことを考えていました。まあその感じが出ていないと言われたらそうなのかもしれないですけど、個人的な感傷というか、そういう感じで。あーこの場所に来るとあれを思い出すみたいな、感じで撮りました。
 
菊池 個人的にそうなんでしょうけど、見た人はそんなことわからないんだよね。それとタイトルの方が美しすぎる、写真じゃなくて。
 で、これ見てみると、いわゆる花写真になってないのが少し救いなんだよね。年をとるとさ、みんな花を撮ったりなんかし始めるけどね、そうなってないのが多少救いだねこれ。まだ若いし。昔ヨドバシカメラとかあのへんに行くといいおばさんが、肩からカメラをさげて、エクタクロームを何十本も買ったりなんかしていて、何を撮るのかなと横で聞いているとだいたい花なんだよね。
 
 花を撮るのが悪いとはいわないけど、そういう人たちはね、お手本写真のような花しか撮らないの。あんなの何百枚も撮ったって感動もなにも与える写真撮れないんだけどね。
これはそういう花写真と少し違うところがよかったですね。
 

H.O いま鈴木さんがたまたま並べ変えましたが、これ明るさを、結局このトーンにもってったってことにあるわけじゃない。この2枚に関して。

 
S.S 並べ方ですか
 

 
H.O このトーンをチョイスしたってことがあって、唯一この写真に寄って立つものがあるとすればそれなんです。他ほとんど意味がない。
 と言うか、写真としてのパワーが出てきてない。唯一パワーがあるのはこのハイキ—なトーンのところなんで、ここをつかまえてテーマにして、花でもいいですけど、まとめていけばなんとかなるかな、というのがありますよね。
 極めて今っぽいですけどね、このトーンは。ですが、写真的なまとまり、かっこつけていくっていうのも一つの在り方なんで。やっぱりこのままだとレア過ぎちゃって、生っぽいんですよね、撮った感じが。
 
 で、いろんな調理の仕方があって、水玉の質感とか、これはもっと本当はシャープに全体にパンフォーカスになっている方がおもしろいでしょうとか、あとコスモスのハイキ—な感じと、っていうことで意識していくとひとつのシリーズとして写真が動くと思うんですよね。
 
 で、それを自分の中でわかってないとすると、ちょっと残念かなって。それをつかまえてればもっとこれで組めたんでね。そこがさっきから言っている編集っていうところで。つまり、もうひとつの人格を作って写真を見てみる。撮った人間ってやっぱりこうなっちゃうから。
 それは、映画だとか、いろんな写真を見てると、だんだん会得できてくる。だからもっと他から刺激を受けていくと良いんじゃないですかね。
 
菊池 これ技術的にみたら失敗作なんだよね。普通は水玉ピシッと出す。
 
 で、これはそれができなかったのか、わざとしなかったのか知らないけど、良くみるとガクにピントがあってるし、まあ花の写真の王道じゃないよね。でもこれはハイキ—にしているんで辛うじて見られるようになったということかもしれないですね。
 軽いという言い方は失礼かもしれないけど、軽くなりすぎてるんだよね。
 
H.O でも今っぽいですよね、今もっと軽いですから、もっとのってますから。
 
鈴木 川内倫子という人の写真展をこの前見に行って、普通の水滴一粒をハイキーにしてこんなにでっかいサイズにしてるんだよ。そういうのがあったの。
 で、これは普通の花の写真で、これをこうするとハイキ—っていうかトーンの問題もあるけど、持っている世界が違う。この2枚とこの2枚とは、世界が違う。
 撮るポイントで違う世界を与える、そこらへんをちょっと・・・。
 
 
菊池 H.Oさんが言ったこれはやっぱりリアル的ですよね、こっちは違いますよね。
 
鈴木 まあ今っぽいって言われて、確かに今の女性の写真ではかなり見受けるんだけど、でもこっちのほうがおもしろい、こっちは単なる花の写真ですよ。
 
H.O たぶん、オートフォーカスが、カメラが間違ってるんですよ。
 オートフォーカスでピントがズレたのを補正するっていう使いこなし方が、今求められちゃってるんですけど。
 まあ銀塩でずっとやっていた方が良かったかもね。
 
鈴木 例えばアマチュアのおばさんおじさんの写真グループとかの写真があるじゃない、写真持っていくとこれとこれが良いとかって言う、そういう写真指導の先生が来てると、言われる可能性がある。「なにこれピントがどこにあるかわからないから駄目」だって。これはピントがきてるしってそういう評価の仕方もある。だからそういうことでは、後は自分の道を信じるしかないですよ。
  

★★★★★★★★★★★★★

J・Dさんの写真を見る

 
J.D 早稲田祭4回連続出品ということで、今回が最後ってことで、まあ出品の意図としては、最後の早稲田祭で集大成の作品を出そうということで、A3ノビ、部室で出せるプリンターサイズ最大の大きさで、これまで大学生活4年間で撮り貯めたものの中から良いものを15枚選んで、集大成にしようという意図で出しました。
 
 で、私は15歳の時から写真をやってまして、その写真を始めたきっかけっていうのも、こういうミリタリーな乗り物が好きで、その好きな対象へのアプローチとして写真が良いんじゃないかっていうことで写真を始めて、それから8年間一貫してこういうことをやってきて、今回4年間の区切りということで出しました。
 
 で、一枚一枚に本当に思い出があって、これを語りだすと2時間くらいかかるのですけど、どの写真も僕にとってはドラマがある、だからこれ出したことでけっこう自己満足はできましたが、正直こういう場で評価されるべきではないと思っています。
 
 私が2年生の時にHさんという先輩に言われたんです、「堂脇の写真はおれは写真として見てない。こういうミリタリーの被写体を見るつもりで見ている」って言われて、正直すごく悔しかったんですけど、だったらもうそれを突き進めるしかない、僕はそれが好きなんだから、それを突き進めるしかないと発奮してこういう写真を撮ってきました。
 
 
H.O なんでミリタリー研究会とかそっちにいかなかったの?なんで写真部に入ったの?
 
J.D 写真部の機材が使いたかったからです。(笑い)
 
H.O じゃ基本的にはこういうものが好きなんですね?で、これ以上の広がりはないわけですね?写真に関していうとね。
 
J.D いや、被写体としては人も風景も一通り人並みには撮れるんですけど、そういう小手先の作品を写真展に出そうという考えがなくて。まあそういうのは人並みのレベルでいいかなと。僕はこっちを突き進めようと。
だから写真部としては相応しくないというのはじゅうじゅう承知しています。
 
 
H.O こういうものって、こう撮るしかないかなっていうレベルのとこで、まあたぶん機材とかスキルっていうのはちょっとづつ上達して反映されているんだろうけど、やっぱりもう、要は鉄道写真とか、形式をちゃんと撮るっていうのと、ちょっと情緒的なものっていうのと、入ってますけど、だからまあそのどっちにいきたいのというところもあるけれど、おそらくその形式がすごい好きで、コレクタタブルのように。
 
 所有欲の代償だよね。だから本当いえば、こういう飛行艇がちゃんととまってて自分のためだけに、そこでカメラを構えて、高画素のデジタルカメラでそれを複写できれば一番幸せっていう。
 
J.D そういうことになりますね。
 
H.O それは帰着点が見えちゃってるから、そういう意味でいうとご苦労様でしたっていうしかないんで。ただそれを本当にそういう野心があるのであれば、これからそういう機会をつくるべく努力して、そういう、我々が見れないようなレベルでの高精細な兵器の写真撮るっていうのはひとつにはおもしろいかもしれないですね。
 
 今デジタルが銀塩時代よりものすごく精度が上がっている。堅くてメタル、金属質なものを撮った時に写真映えするようになっているのでね。
 
菊池 もう就職決まっちゃったから遅いけどさ、自衛隊にはいればよかったんだよ。
 
 
J.D それはまた僕のなかでは別の話なんですよ。たとえばディズニーランドが好きだからって、ディズニーランドで働こうとは思わないし、写真が好きだからってカメラマンになる人もそういないじゃないですか。
 
菊池 ぼく自衛隊のカメラマンが撮った写真を見たことあるんだけどね、エッと思う写真が撮れるんだよ、どこへでもいけるから。まっくら闇の中で戦車が発砲するわけだよ、煙がこうなって、発砲した明かりだけで撮ってるんだけどさ、それなんか芸術的なんだよ。一般人には撮れないしね。
 ほんとに感心する、エッていう写真あるよね。ぼくらはとても近くにいけないものだからね、やっぱり乗り物、レースの写真と、同じだから。
 
鈴木 これさー、軍艦とかジェット戦闘機とか戦車とかを撮ると、写真ではないの?さっき写真ではないって言ってたけど。
 
J.D 写真ではあるんですけど、そのいわゆる写真的評価を、与えられる作品ではないと。
  
鈴木 そんなことはないよ、なに撮ったって、写真は写真だよ。
 会場で見て巧いなと思った。長玉の使い方が巧いなと思った。
 
 で、自衛隊に入ればいいっていう話は別ね。ちょっと後でそれは聞きたいんだけどそれは別で。
 
 軍艦だろうが戦車だろうが、何んだって写ってれば、カメラ使えば写真だよ。写真的表現って、なんとなくアートっぽいとか、あるいはブレッソンみたいだと、写真なの?どうしてこれは写真的な作品じゃないの?
 
 僕はあまり技術とか、カメラは写ればいいと思ってるんだけど、会場で見たときにあー自衛隊のPRに使えるなって、広報で借りに来るんじゃないかなって。そのくらいのレベルには行ってるでしょ。
 ぼく自体がこういうものについて、どう思っているかっていうのはまた別の問題なんだけど。
 だけど、技術的にはうまいなと思いましたね。
 
J.D ありがとうございます。それは自分でも自信があることで、大学生でこのレベル撮れる人はそうはいないって思います。
 
菊池 世界の艦船とかあーいう雑誌にも使えるくらいだよ。
 
J.D そうですね、そういう専門誌にはけっこう定期的に僕の写真が載っています。
 知ってる人は知ってるっていう感じです。
 
鈴木 で、これは空撮だけど、これはやっぱり自衛隊記念日かなんかの時に、基地が開放されて?
 
 
 
J.D あっそれ空撮じゃなくて、レインボーブリッジから。日本でこのアングルが撮れるのは、レインボーブリッジとあと瀬戸大橋だけっていう。
 場所のリサーチとかは経験から得たりとか、ひとに訊いたり。場所命ですね、場所とタイミングです。
 
白谷 何か所ぐらい行ったの?
 
J.D これはもう北は北海道から南は福岡まで、だいたい40とかそれ以上。
 
鈴木 ちなみに早稲田祭に出してて、他の大学の写真部の学生とかあるいは写真部でない学生が見て、こういう自衛隊の写真が並んでて、どういうつもりで撮ってるんだってきかれることはある?
 
J.D それがあんまりないですよね。僕は完全に政治的なあれは切り離して考えてるんですけど、まあこういう写真を出す以上は、そういう批判みたいなのがあるかなって思っていたら、4年間出し続けて、意外とないんですよ。
 
 だからこういう死の商人的な人殺しの道具を撮るのはいかがなものか、というような意見は意外となかったです、この4年間。
 
鈴木 まあ死の商人とまではいわないけど。(笑い)
 
 
H.O そう思って撮ってたらもっと違う写真が撮れるよ。
 
J.D あっそうですね、僕は単純に美しさを表現したいと思って。
 
鈴木 マニアが撮ってるって感じがわかるね。
 
H.O マニアックすぎちゃって、その専門誌までですよね。
 極めて専門誌的なところで、だからそっから先があるとすればさっき言ったようにもっと近くに寄って高精細で撮る、写真的な怖さっていうところが、もしこういうのにあるとすれば
 
菊池 スペースシャトルとかを撮ってる人がいるよね
 
H.O もっと労力を使ってますよね、金も使ってるだろうし。だから結局そういうことなんですよね、そっから先があるのは、アマチュアとしてできる範囲では、行ける所までは行ったかなって感じなんでしょう?
 
J.D そうですね、おっしゃるとうりです。
 
H.O だからもっと冷徹に切り離していって、背景が写らないとか、なるたけ要素がからまないとか、そういうのがもっと高精細でぐっと出てくると、写真的にすごいっていうか。
 要するにこういう「オタクが撮ってる写真」というよりも、刺さってくるかもしれないですね。
 要はこういうフォーメーションのきれいさとか、そういうのにうっとりしてない、質感だけに寄るっていう、だからそこのね、いろいろ鉄道写真とか見ても、もう一歩寄るとモノとしてのすごさがでてくる、そこまで行ってくれるとおもしろい。