平尾 敦のNY日記 #5

◎平尾 敦のNY日記 #5 (注:メール事情により原稿が届かず、掲載が半年遅れました)
 
 ニューヨークでも長く厳しい冬が去り、少し蒸し暑い日が続いております。
昨年の夏にアメリカに到着したのがつい先日のように感じられますが、1年間のプログラムも終わりを迎えました。学校内では卒業制作の展示が始まり、6月22日は卒業式もありました。
 
 
 この9ヶ月間、課題や授業、卒業制作に追われ、せっかく頂いたこのスペースにもなかなか記事を投稿することができませんでした。そこで今回は今まで書くことができなかったこと、特に卒業制作について書いていきたいと思います。
 
 私の卒業制作のタイトルは「My Bulimic Girlfriend」です。”Bulimic”とは英語で”過食症の”という意味です。
 
去年の11月、当時交際半年だった彼女に「私は過食嘔吐をしている」と告白されました。過食嘔吐は拒食症等と同じ摂食障害の一種で、その名の通り、食欲のコントロールを失い、太りたくない気持ちから全てを吐き出してしまう精神疾患です。作品はニューヨークで3ヶ月間、4月に日本に一時帰国して撮影しました。
 
彼女は特別太っているわけでも、特別痩せているわけでもありません。そんな彼女がどうして密かに大量に食べ、直後に吐き出すのか、理解しようとしたのがこの作品です。そして「今まで誰にも話したことがなかったのは、誰も理解してくれると思わなかったから。もし何かきっかけがあるのならば、それはいいことだと思う。」という彼女の言葉に後押しされて、作品を発表することにしました。
 
 
また、私にとって写真を撮るという行為は一種の自己防衛だったのかもしれません。
 
”怪物と闘う者は、その過程で自らが怪物と化さぬよう心せよ。おまえが長く深淵を覗くならば、深淵もまた等しくおまえを見返すのだ。”
 
とはニーチェの言葉ですが、私は彼女の深淵をレンズを通して見ようと思いました。結果として、カメラという機械を挟んで接することがいかに残酷な行為であるか、写真を撮るとはどういう行為であるかについて日々考えさせられました。
 
 そして学校生活を振り返ると、彼女の滞在期間の都合上、学校の作品制作スケジュールとは全く噛み合ず、時には先生と喧嘩をしながらも、最後まで見捨てずに面倒を見てくださった先生方や同級生には感謝の気持ちしかありません。
 
そんな彼らとの展示は国際写真センターにて、8月11日までです。ニューヨークにお立ち寄りの際は是非いらしてください。また、動画、写真は私のwebサイトでもご覧頂けます。(www.atsushihirao.com)
 
 
 最後になりましたが留学にあたり必要なサポートをして頂いた白谷達也様、推薦状を書いていただいた鈴木龍一郎様をはじめ、稲門写真クラブの皆様に改めて御礼申し上げます。
 
また、私の遅筆、拙筆に最後までお読みいただいた皆様、本当にありがとうございました。
 

2014年6月30日 平尾 敦