WPS「春季展」を見て  昭和47年卒・柏木久育+

「春季展」ご挨拶 

木々も芽吹き、新緑の葉が茂る季節となりました。

本日は早稲田大学写真部「春季展」にお越し頂き誠にありがとうございます。

この春季展は、当部の定期写真展の中で毎年最初に開催する写真展です。

「春」と銘打っておりますが、今年もひとつのテーマに絞られておりません。

作風や雰囲気などがそれぞれ異なる、様々な作品が数多くございます。 写真の数だけ、伝えたいことがあります。

部員たちが試行錯誤しながら生み出した、ひとつひとつの個性がある作品をぜひご覧ください。

そしてその中で、皆様のお気に入りの一枚が見つかりますことを祈っております。本日はごゆっくりお楽しみください。

 早稲田大学写真部 部員一同

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今回は、いつもの増田幹事(平成3年卒)に加え、ゲストに 柏木OB(昭和47年卒)に参加してもらって「春季展」を見に行った。

先だって同じ会場で開催された「椿季展」の時感じていた照明の違和感が解消されて落ち着いた照明になっていた。天井の蛍光灯を間引きしたとのことだった。

出展数は25点。出したいと思った人は誰でも出すことが出来るそうで、昨年よりは点数も多いとのことだったが、もう少し点数が有っても良いような気がした。bookは少なく2点に止まっており、ちょっと写真展のやり過ぎとも思った。

「ジイサンの写真ばっかり!!年寄りが写した写真だらけ!!」

と、のっけから柏木OBの辛口コメントが炸裂し、親切に対応してくれていたYさんが思わずよろめいた。

ジイサンの僕もドキンとした。

柏木OBは毎年ニューヨークに出かけて行っては地下鉄などでスナップショットを撮っている人なので、草花と風景がほとんどで人を写した写真の展示が一点だけだったので不満だったようだ。因に桜の写真は4点もあった。

『幽玄』

『春を恨んだりはしない』

柏木OBが唯一興味を示したのはTさんの『女の子』という作品だけだった。

「どうして『女の子』に興味が有るの?」

「人が写っているから」

と、理由は非常に分かりやすいものだった。

『女の子』

TさんはM美術大学の学生だがWPSのメンバーとして毎回意欲的に創作活動をやっている男子だ。

因に他大学からの部員はというと、男子が3校から、女子は女子大主体に6校から入部していて、合計30名ほどの在籍者があり全部員の3割ほどを占めているとのことだった。

思わずOB3人はカオを見合わせたのだった。

「う???ん、女子大からそんなに!!生きる時代を間違えた!!」

毎回現役の写真展に足を運んでいる増田幹事の感想は

「以前の出品作でも言われたことですが、作品点数やセレクトに迷いが感じられる。ストーリー性を持たせるのもおもしろいではないか。いずれにしても、一点一点は撮影者と被写体との距離感が伝わる良い写真」

とのことだった。

『跫音』

Yさんの『跫音 』。

「普段は鉄道や工場夜景を撮っているが、何だか一枚だけ撮れちゃった写真」

とのことだった。

スナップショットのエキスパートである柏木OBにもチョッピリ興味を示した風情が見て取れたが

「足が動いた時を狙った方が良かったのでは」

という苦言を呈することを忘れなかった。僕には止まっている方が良いように思えた。

「普段は鉄道や夜景を撮影しているYくんからは想像もつかない写真で驚いています。ある程度決められた場所や角度で撮影する鉄道や夜景とは違い、ふと何かを感じてシャッターを押してしまうといった感じが伝わってくるYさんにとっては新しい方向性の写真」というのが増田幹事の感想だった。

その温厚な人柄がそうさせるのか、現役諸兄のモチベーションを下げないために、つい褒め上手になってしまう増田幹事だった。

『早春の甘党』

Hさんの『早春の甘党』。

「な、何だ!!このタイトルは!!こんな写真出したら目の前で破かれてたよ、昔は!!」とは柏木OB

自宅の庭の梅の木に止まったウグイス。ピントはしっかり来ているが背景がやや中途半端になったかな。

『沈黙』

Sさんの『沈黙』。足尾銅山への撮影行での成果。

 

「この建物の中に入らなかったの?」とは柏木OB。

 

「立ち入り禁止でしたから」とは同行したYさん。

 

立ち入り禁止の建物に侵入するかどうかは別として、奥の本山地区には行かなかったようで、むしろその事が僕にとっては不思議なことだった。

 

〖柏木OBからのお手紙〗

 

 前略、早稲田老人クラブの春季展にお招きいただき、ありがとうございました。

人生の先輩の皆様に、僭越ですが若輩の身から感想を述べさせていただきます。

 

桜の花々を写した写真が数点ありますが、定番写真の常識を守り、月並み写真

の王道をいく方法と見受けました。千鳥ヶ淵の夜景を取り入れた写真などは、

余分なビルなど、邪魔な風物を取り入れ、現代に媚びて、感心しません。

 

花と鶯、もうすこし余白をいれると、俳句を書き込むのに最適で見事です。

 

老人たるもの、周辺の人々と争うことなく、自分の枠をしっかりと守り、何事

も平穏無事が大切です。街角で人々を撮影して、トラブルに巻き込まれること

など、厳しく慎むべきことです。

 

足尾銅山の写真でも、正しく法律を順守し、立ち入り禁止をかいくぐることな

ど、決してゆるされません。写真さえ面白くなればなど、とんでもないことです。

 

何事にも、こだわりを捨て、ただただ流れに身を任せて、平々凡々こそ、

長生きの極意です。自分自身を見つめすぎてはいけません。写真なんて、ほん

の趣味なんですから、打ち込んでは元も子もありません。

 

残り少ない人生とは思いますが、皆様のますますのご精進をお祈りします。